日経X-Trendでインタビュー記事が二本出ました。
タイトルは扇情的だけど、僕のせいではないからね!
これに伴って様々なコメントが来るようになりました。うれしいものとしては、東大の宍戸先生の「 本当に読み応えのある決定版ですね。 」72というものから、「ここで言っている『情報銀行』は『データポータビリティ』が無いし、違うんじゃないか」というご意見まで様々です。
そもそも、「情報銀行」というのは、その言葉がでてきた当初はどういうものだったのでしょうか?
(以下、いろいろ情報が集まってきているので、随時改定します。)
「情報銀行」は、検索した限りだと、2011年のJIPDECの情報銀行研究会あたりが最初に見えますね。2009年度の「近未来バリューチェーン研究会」(JIPDEC)73が最初に見えますね。Naoyuki Itoさん、ご指摘ありがとうございました。もちろん柴崎先生関係になります。それ以前になると、別のコンテキストの「情報銀行」ばかりになります7475
ここでは、情報銀行TFの目標として、
銀行がお金を預かり、運用しているように、情報を預かり、適切に運用するための機関である「情報銀行」のコンセプトを提唱し、情報銀行の成立に関する議論を行う。具体的には、生活空間(街中、自動車等)に点在する様々なセンサーを活用し、収集した情報を蓄積/活用して新たなサービスを生み出すことを目指す。
(出所)JIPDEC「近未来バリューチェーン基盤整備WG活動報告書2009」 P.3
具体的な検討事項:
✔ 情報収集の技術や手法
✔ 情報収集のルールや必要となる基準・標準 等
と掲げられております。
その後、同じくJIPDECで2011年度に情報銀行研究会が行われており、当時私は多分JIPDECのアドバイザリー会議で聞いたのが最初だと思います76。2012年には、柴崎先生がTEDxでも公演77されておられますね。
柴崎先生は空間情報科学がご専門ですから、当初はそちらからのアプローチであったように思われます。問題意識として、
- 東日本大震災のときの利用者の最後の所在情報は携帯電話会社に残っているはずなのに、通信の秘密に該当するので、行方不明になった親戚を探そうとしても使えなかった。
- データが有るのに全く使えないという問題はなんとかする必要がある。
- そのためには、自分の個人情報は本来自分自身で管理し、自分のために使えるようにすべき。その仕組として「情報銀行」を試みている。
- 「情報銀行」は、個人の情報を情報銀行の自分の口座に預け入れて、自分のために使えるようにする仕組み。
- 一方、災害のときのようにどこに何人取り残されているノアを救助する側が知りたいときには、情報銀行経由でプライバシーがもれないように人数だけを教えることができる。
- お金を扱う銀行のように、自分が預けた情報が確実に守られた上で、その情報が社会にいろいろな形で貢献ができる。
というようなことをおっしゃっておられます78。
さらに、2013年には情報銀行コンソーシアムが組織化79され、 それを受けて、2014年のJICSのClosing Panel で「情報銀行とPDSは、パーソナルデータ活用のための高性能スポーツカー足り得るか?」と題して情報銀行をやっていました
80 。私はモデレータで、砂原先生と佐藤 慶浩 さんがパネリストでした。
それ以前のわたしの周りのコンテキストだと、PDV(Personal Data Vault), PDS(Personal Data Store)ないしはPDE(Personal Data Ecosystem)ですね。後ろ二者は、IIWで出てきた概念ですね、多分。遅くとも2010年には出ていて、Identity Woman と Markus のスライドがSlideShareに上がっています81。
一方では、PDVは2009年の論文「 Designing the Personal Data Stream: Enabling Participatory Privacy in Mobile Personal Sensing 」82にあらわれています。
IIW周り 83 で出てきた関連する概念としては、Doc SearlsのVRMもあります。なので、「情報銀行」が出てきたとき、「PDSや PDEとの相互運用性はどうなるのか」というのが一番気になったのを覚えています。まぁ、PDSもPDEもProtocolを定義しなかったのでだめなんですけど。ちなみに、Personal Data Store を「Store(倉庫)じゃだめだ。Serviceでなければ。」とMIT-KITのOpenPDSのディレクターだったThomas Hadjorno に指摘したのは、2013年6月26日(水)のIdCon Satellite 84。今見ると、Wikipediaも「Service」にいつの間にかなっていますね。
このあたりに使えそうな思想とプロトコルを最初に推進していたのは、当時はSun MicrosystemsだったEve Maler @ 2008年とかではないかな。今で言うUMA(User Managed Access)85ですね。 そのルーツは、Liberty Alliance のID-WSFかな。 Thomasも一緒になって推進していた主要人物のひとり。当時、Sun Microsystem のキャンパスでやっていたLibertyの会合のあとに呼ばれてUMAのアイディアを聞かされたのを覚えているので、多分2008年だったはず。
UMAは、思想は良いのですが、KISS原則に反しているので普及してませんね。モラル的には応援しているし、レビューもしてる( though often last minutes) んですが、ずっとネガティブコメントを入れ続けてる86ので、Eveからは、「じゃぁ対案を示せよ」と思われてると思いますが…。
で、「データ・ポータビリティ」ですが、それには機械可読かつ標準化されたスキーマおよびそれを転送するプロトコルが必要です。それが無い段階は、単なる情報開示です。プロトコルに関してはUMAが近いのは間違いありません。しかし、UMAはスキーマは提供しないので、スキーマは作らないと。現状であるものは、Open Banking87 と FHIR88くらいでは無いですかね。なので、現状の認定基準89では、「開示」にとどめているのです。データポータビリティにすると、金融・医療以外は実現不能で、しかも、「総務省・経産省の指針 ver.1」ではこれらは out of scope なので。だれも取得不能な認定基準は無意味ですからね。
そういう意味では、可及的速やかなスキーマの国際標準化が求められていると思います。このあたりでビジネス化されようという方々は、ぜひそのあたりにご予算をつけられますように。
